「いつか田舎で小さなカフェを開きたい」――そう夢見たのは、仕事に追われながら暮らしていた時にふと訪れた、田舎の祖母宅で広がる田園風景を見たときでした。
今、地方での空き家問題が深刻化しています。
実際、私の周りでも実家が誰も継がずに空き家状態になってしまっているという話を耳にします。
これは、決して人ごとではない問題です。
私も地方出身で、祖母の家と自分の実家の2件が田舎にありますが、両親がいなくなればこの2件とも空き家になります。
この記事では、40代女性の私が身に降りかかる空き家問題を考えつつ、田舎の祖母宅を活用してバイカーやサイクラー向けのカフェを作り始めたリアルなプロセスをお届けします。
都会ではなく、「田舎」で、しかも「祖母宅」を活用するからこそ見えてきたメリットとデメリット、実際に必要だった改装や許可取得の方法、そしてDIYで工夫したポイントなどをご紹介します。
これからカフェ開業を目指す方や、地方の実家の活用方法に頭を悩ませている方にも役立つ情報になれば嬉しく思います。

\\ この記事を書いた人 //
こんにちは、ミリコです
40代独身派遣社員(ニャン太2匹と生活中)
FP2級取得
東京と田舎の二拠点生活をしながら
田舎でライダーズカフェを開業するために奮闘中です🎶
実家カフェ開業を決めた理由と想い
私の祖母は田舎の山奥に住んでいました。
田園風景と山が広がる、自然豊かな場所です。
3年前祖母が亡くなり、今はその家に両親が住んでいます。
40代になり、ふと見る両親の後ろ姿も小さくなってきました。
都会で忙しく働いていると、一日どころか1週間、1ヶ月が飛ぶように過ぎていきます。
私は独身だしこのまま一人で生きているのもいいけど、寂しいなぁ・・・
田舎の両親がもっと歳を取ったらどうやって面倒をみようか・・・?
そんなことを漠然と考えているうちに、都会の会社でリモートで働きながら、田舎で小さなカフェでもできないか?
と考えるようになりました。
両親に手伝ってもらうことで、二人の楽しみも増えるし、私も独身だけど仲間ができて楽しく生きていけると思いました。
両親の介護のために仕事を辞める、自分の夢を諦める必要はありません。
どうしたら同時に二つのことが叶えられるのか、それを考えた結果、「田舎でライダーズカフェをやる」に至ったのです。



親の介護問題は、40・50代のリアルな悩みですよね。家で介護しつつ、在宅勤務の仕事をすれば仕事を辞めずに介護と仕事をうまく両立させることも可能です
バイカー&サイクラー向けに特化した理由
私がカフェ開業に向けて最初に決めたのは、「誰のためのカフェか?」ということでした。
田舎の祖母の家は、ちょうどツーリングロードの途中にある静かな里山の中。
休日になると、バイクやロードバイクで通る人が多いことに気付きました。
山を下ってくると、開けた道が現れ田園風景が広がります。
周りにお店は一軒もありません。
「目的地までの間に少し休憩できる場所」をここに作ったら、ライダーやサイクラーに喜ばれるのでは?
そう考えました。
そのニーズに応えたくて、「バイカー&サイクラー専用カフェ」というコンセプトに決めたのです。



「人が困っているところ」にこそビジネスチャンスがあるよね!
空き家じゃない実家の“難しさ”
「田舎で空き家をリノベしてカフェに」という話はよくありますが、私の場合は違いました。
祖母の家に今は両親が住んでいます。
住んでいる家を使って飲食店営業許可を取得するためには、生活空間と店舗スペースを分けなければならないという課題がありました。
一番困ったのは、両親が毎日使っているキッチンでは飲食店営業許可は下りないということ。
居住用の飲食を作るスペースとお客様へ提供する飲食を作るスペースは完全に分ける必要がありました。
家の中にもう一つキッチンを作るとなると、大掛かりなリノベーションが必要になり費用がかさみます。
そのため、祖母が昔使っていた外にある古い小屋を改装してキッチンにする決断をしました。



まずは小さく始めてみれば、失敗しても致命傷を負わずにすむよね
飲食店営業許可の壁と解決策
カフェを始める場合、必ず必要になるのが「飲食店営業許可」です。
「飲食店営業許可」は、カフェ等の飲食店を開業する際に必要となる公的な許可です。
食品衛生法に基づいており、衛生的に飲食店の施設や食品が扱われているかを確認するためのものです。
これがないと、カフェを開業することはできません。
・取得方法 :管轄の保健所による実地検査を受けて合格する必要がある
・申請方法 :店舗を管轄する保健所の窓口で申し込む
・申請費用 :18,300円 ※新宿区の場合。各地域により金額は異なる
・必要書類 :「営業許可申請書」「施設の構造及び設備を示す図面」「食品衛生管理責任者証明書」
- 事前相談
- 申請書類の提出 (※この時に「食品衛生責任者」を取得している必要がある)
- 施設の実地検査
- 許可証の交付
詳しい申請の流れ等については、こちら→「厚生労働省 一般的な営業許可手続きの流れ」
家のキッチンで営業できない現実
自宅をカフェにする上で最初に立ちはだかるのが「飲食店営業許可」。
保健所に相談したところ、「生活空間と営業用のキッチンが一体化している場合、営業許可は基本的に下りない」と言われました。
自宅をカフェにする場合、生活と営業の区分が厳しく求められます。
空き家の場合は、キッチンで飲食店営業許可を取得可能です。
ただ、自宅の場合は店舗が1階で自宅が2階にあるなど、生活空間と営業用のキッチンが分かれている必要があります。
祖母宅でいえば、自宅用のキッチンとは別に、営業用のキッチンを新たに作る必要がありました。



キッチンを新たに自宅の中に作るとなると、かなり大掛かりなリノベーションが必要で費用がかさむので、一時はカフェ開業を諦めました
外にある“祖母の小屋”を改装して対応




そこで思いついたのが、庭の端にある昔祖母が漬物や保存食を作っていた小屋のキッチンです。
ここなら独立しており、生活空間と明確に分かれているため、営業許可を取れる可能性があると判断。
最低限の水回りと換気設備を整えるよう図面を作成し、保健所に計画書と一緒に持ち込んだところ、飲食店営業許可の取得は可能と回答をいただくことができました!
これは朗報です。
その後、4回ほど保健所に足を運び、図面上でのOKをいただき無事工事に進めることができました。
ガレージを「イートインスペース」にDIY
テイクアウトだけど“座って食べられる”場所が必要
私のカフェはテイクアウトスタイル。
でも、サイクリストやバイカーの多くは、飲み物や軽食をその場でゆっくり楽しみたいもの。
とはいえ、飲食店営業許可の面で店内飲食スペースを作るのはハードルが高い。
そこで考えたのが、庭にある古いガレージをイートインスペースに改装することでした。
テイクアウトした飲食物をどこで食べるかは消費者の自由
椅子とテーブルもDIYをしてガレージの中に置き、庭に東屋も作りました。
ガレージの中はこれからDIYが必要です。
ガレージのDIYを目的に、バイカーやサイクリストが集い、ワイワイしながらみんなでイートインスペースを作り上げていけたらいいなぁと考えています。



バイカーの人たちがDIYに協力してくれると、きっと出来上がったカフェに愛着を持ってくれるよね!
手作りで作るカフェスペースの魅力
ガレージには、古い梁やレトロな屋根が残っており、いい雰囲気があります。
床はコンクリートにして、壁は造形モルタルでレンガ風にしつつ古い木を使ってブルックリン風のガレージカフェにしていこうと思っています。
テーブルと椅子は、近くの廃校から廃材を譲ってもらったり、自分たちでDIYする予定です。
結果、費用をかけずに素敵な「半屋外カフェスペース」が出来上がる予定です。
手作りで作り上げることで、自分たちの理想通りの空間を低コストで完成させることができます。
集った仲間たちと楽しみながら一緒に作り上げることで、出来上がった時の感動もひとしおになるはずです。



田舎の山奥なので、人が集まるだけで活気に溢れ両親も生きがいを感じてくれると思っています
実家(自宅)カフェのメリットとは?
家賃がかからない
最大のメリットはやはりこれ。
テナントを借りない=固定費が激減します。
家賃がかからないだけで、カフェ開業の心理的ハードルはぐんと下がります。
初めのうちはお客さんが定着しなくても、ランニングコストがかからない分、無理なくお店の経営を続けることができます。



カフェ経営には、家賃がランニングコストとして重くのしかかるよね
地域とのつながりが自然にできる
実家を活用してカフェにすることで、地域の方がコーヒーを飲みにきてくれたり、近所の方々の「溜まり場」になったりと、自然とつながりができてきます。
近所の方が作った「売り物にならない野菜」で作る料理を提供すれば、フードロスや地域貢献にもつながります。
徐々に、周りの人が協力してくれるようになったり、アドバイスをくれたりと、「カフェ」をきっかけに様々なつながりができることが自宅カフェの魅力と言えます。



カフェ開業を目指していると聞きつけた近所の方が、助成金の情報など色々集めてきてくれるようになりました
自然に囲まれたロケーションが魅力
私の祖母宅は、目の前に田んぼ、背後に山という自然の中。
バイカーやサイクラーにとっては、「目的地にしたくなるような立地」です。
都会では再現できない「場所の価値」がここにはあります。
これまでは、何の価値も生み出さない「ただの田舎の家」としか考えていませんでしたが、実はそこにこそ魅力があると気づきました。



田んぼがあれば田植え体験などをやっても楽しめますよね。田舎の家には楽しめるリソースが実はたくさん眠っている気がします
実家(自宅)カフェのデメリットと注意点
家族との協力が不可欠
両親の生活空間を一部借りて営業するという形なので、家族との協力・信頼関係が必須です。
両親が全くやりたくない場合、無理強いをすることはできません。
当初、父はかなり前向きでしたが、母は後ろ向きでした。
母が自ら「やろう!」と思えるまで、色々な話をしながら気長に待ちました。
その間に、衛生管理責任者の資格を取ったり、カフェのメニューを考えたり、他にできることを進めていました。



数年かかりましたが、今では母が一番やる気があります。生き生きし始め、毎日が楽しそうです。人は、何かきっかけがあればこんなにも変わるんだと驚いています。
許可や法的な制約が多い
さきほど触れたように、生活空間と営業スペースの区分が求められるため、空き家に比べて手間と制約が多いのは事実です。
ただ、どうしたら飲食店営業許可を取れるのか?を深く考えていけば、道は開けます。
プライベートと仕事の境界があいまいになる
自宅=職場になるため、オン・オフの切り替えが難しくなります。
営業時間外やお休みの日に自宅でゆっくりしていても、お客さんがきてしまうことがあります。
店舗が別の場所にあれば、営業時間外にお客さんの対応をする必要はありませんが、自宅の場合はそうもいきません。



営業時間外だからといって、お客さんを無碍に扱うこともできないから、結局コーヒーを作ったり、働くことになるよね
プライバシーがなくなる
自宅をカフェにする場合、居住スペースと営業スペースが同じ敷地内にあるため普段の生活面でのプライバシーがなくなります。
お客さんに自分が住んでいる家を見られたくないと思う方も多くいるでしょう。
自分の生活の一部を他人に知られる・見られることは、ある意味ではデメリットになると思います。
まとめ 田舎の実家カフェは可能性に満ちている
実家をカフェにするのは、空き家活用とは違った難しさがあります。
でも、「今あるものを活かす」視点を持てば、コストも抑えながら魅力的なお店を作ることができます。
私のように、40代から新しい挑戦を始めるのは勇気がいります。
でも、田舎には、都会にはない魅力と、地域とつながる温かさがあります。
バイカーやサイクラーが集い、笑顔が集まる場所を作る――
そんな想いで、今日もガレージカフェのドアを開ける準備を進めています。



祖母宅は、ライダーズカフェとして活用しますが、もう一軒ある「私の実家」は、今後「賃貸」にできないか検討中です。空き家にしてしまうと家も痛むため、誰かに使ってもらえる方法を考えています。
このあたりも、今後ブログにまとめていくようにします。
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