
親が高齢になり、実家をどう活用するか悩んでいる・・・
そんな思いを抱えている方は少なくないはずです。
私もその一人。
祖母が亡くなった後、両親は祖母宅で暮らし、私の実家は週に数回母が泊まる“ほぼ空き家”状態に。
このままでは、どちらの家もいずれ空き家になってしまう。
せっかくの田舎の風景と家を、何とか次につなげられないか?
親の生きがいや、私自身の将来にもつながる何かはないか?
そう考えていたある日、ふと目の前の道を何台ものバイクが通り過ぎていくのを見て、ハッとしました。
ここは、バイカーやサイクリストが多く通る山道。でも、休憩できるようなお店は近くに一軒もない。
この場所に、ちょっと休めるカフェがあったら喜ばれるかもしれない。
田舎には、まだまだ使われていない・気付かれていない“可能性”がたくさん眠っています。
この土地の魅力を活かしつつ、親の生きがいにもなり、自分も楽しく続けられる場所。
それが、「実家カフェ」というアイデアの始まりでした。
ところが、最初にぶつかったのが“飲食店営業許可”の壁。
空き家なら自由に使えるのに、今回は両親が暮らす現役の家。
台所をそのままカフェには使えず、最初から大きなハードルに直面したのです。
この記事では、実家の台所で営業できなかった理由と、そこから庭の古い小屋を改装して営業許可を取得するまでの実体験を、具体的に紹介します。
・田舎に祖母宅とわたしの実家の2軒ありますが、現在両親が祖母宅に住んでいるため、便宜上、このブログでは祖母宅を「実家」と呼んでいます。



\\ この記事を書いた人 //
こんにちは、ミリコです
40代独身派遣社員(ニャン太2匹と生活中)
FP2級取得
東京と田舎の二拠点生活をしながら
田舎でライダーズカフェを開業するために奮闘中です🎶
実家のキッチンでは飲食店営業許可が下りない?
保健所に相談してわかった厳しい現実
カフェを始めるには、まず「飲食店営業許可」が必要です。
これは各都道府県の保健所が管轄しており、衛生面の基準を満たした設備が求められます。
最初に私は、祖母の家の台所を使って簡易的なカフェを考えていました。
しかし、保健所の相談窓口であっさりと却下されます。理由はこうです:
・生活空間と営業スペースの明確な分離が必要
・調理器具や食材の共用はNG
・営業時間外に家族が営業スペースのキッチンを使う可能性があると許可は下りない
両親が毎日使うキッチンでは、衛生管理上の問題が避けられないというのが大きな理由でした。
自宅カフェ=簡単、ではない
ネットで「自宅カフェ」「実家カフェ」と検索すると、「家で簡単にカフェができる!」という情報があふれています。
でも、実際は建物の用途や衛生基準、家族との住居区分など、多くの制約があります。
特に、住居スペースと営業スペースをどう区切るかが重要です。
例えば、商店街によくある『1階が店舗で2階が住居スペース』になっている場合は、飲食店営業許可は取りやすいと言えます。
住居スペースと店舗が完全に分かれているからです。
解決策は“庭の小屋”の存在だった




祖母の「保存食小屋」が鍵に
一度は断念しかけたとき、思い出したのが、庭の隅にある古い調理小屋。
かつて祖母が味噌や梅干しを仕込んでいた、年季の入った木造の小屋です。
中にはかまど、流し台、作業台があり、井戸水が引かれていました。
長年放置されていましたが、生活空間と完全に分離されているこの場所なら、営業許可の要件をクリアできるのでは?と考えました。
保健所に「この小屋で営業したい」と相談
実際の小屋の写真と簡単なレイアウトを持って、再び保健所へ。担当者は少し驚いていましたが、こう言ってくれました:
「生活空間から完全に独立しているなら、改装次第で許可は出せますよ」
ただし、そのためには保健所が求める条件を満たす必要があると言われました。
飲食店営業許可に必要な設備とは?
保健所が求める最低限の基準
営業許可を取得するためには、以下のような設備が必要になります。
ただし、管轄の保健所により若干条件がことなるため、詳細は書く保健所のサイトをご確認ください。
設備名 | 要件 |
---|---|
手洗い専用の流し台 | 調理用とは別に手洗い用の流し台が必要 |
給湯設備 | 温水が出るようにする(推奨) |
換気設備 | 火気使用の場合、十分な換気扇が必要 |
床・壁・天井 | 天井は、埃が落ちないよう平でなければならない 水洗い可能な素材(清掃しやすいこと) 天井の電気は、吊り下げはNG(埃が落ちるため) |
食品保管庫 | 食材を衛生的に保管できる冷蔵庫や冷凍庫の準備 冷蔵庫と冷凍庫は温度計があること |
食器保管棚 | 食器や器具の清潔な扉付きの収納スペース |
ゴミ箱の設置 | 蓋付きのゴミ箱が必要 |
さらに、**動線の分離(汚染区と非汚染区の区別)**などもチェックされます。
詳しくはこちらの記事をどうぞ。


実際にやった改装内容




小屋は古く、天井はむき出しの木だったため、断熱材を追加して平にしました。
壁にはキッチンパネルを貼り、水は町営水道を利用するようにして、2層式のシンクを設置しました。
カズコンロも設置し、その上には換気扇と窓を設置しました。
窓には、虫が入ってこないよう網戸の設置が必須です。
床はコンクリートだったのでそのままにして、壁は水拭きができるよう壁紙を貼りました。
どうしても自分達ではできない箇所だけ大工さんに依頼し、それ以外はDIYでやったため、費用は合計で約100万円に抑えることができました。
営業許可を取得するまでの流れ
ステップ①:事前相談
最初に、保健所に電話でアポイントを取り、事前相談に行きました。
小屋の写真や簡単な手書きの図面、営業内容(提供予定のメニュー)などを説明しました。
どのように改装していけば飲食店営業許可が取れるのか、アドバイスをもらいながら、改装プランを練りました。
実際に改装工事に着手するのは、保健所に図面を提出してOKが出てからです。
詳しくはこちらの記事をどうぞ>>【カフェ開業】保健所への事前相談に行くタイミングや手続きの流れを解説


ステップ②:改装&設備準備
保健所に図面を提出し、工事着手してOKとの回答をもらえたら、実際に改装を始めます。
同時に、備品(冷蔵庫・調理器具・保存容器)を中古ショップやリサイクルセンターで揃えました。
冷蔵庫などの電化製品は中古品だと当たり外れがあるので、新品を購入することにしました。



最初から高い機材などを購入せず、「小さく始める」ことを意識して、中古品をうまく利用しながら最低限の設備を揃えました
ステップ③:飲食店営業許可申請
改装工事が完了し必要な設備が一通り揃ったら、正式な「飲食店営業許可申請書」を提出します。
費用は都道府県により異なります。
また、申請時に「食品衛生管理責任者」の任命とその証明書の提出が必要となるので、それまでに取得しておきましょう。
・取得方法 :管轄の保健所による実地検査を受けて合格する必要がある
・申請方法 :店舗を管轄する保健所の窓口で申し込む
・申請費用 :18,300円 ※新宿区の場合。各地域により金額は異なる
・必要書類 :「営業許可申請書」「施設の構造及び設備を示す図面」「食品衛生管理責任者証明書」
ステップ④:現地実地検査
保健所の担当者が実際に施設に来て、設備や清掃状況をチェックします。
この検査で問題がなければ、数日後に「飲食店営業許可証」が交付されます。
どのような検査なのか、指摘ポイントなどは別のブログで詳しく解説しますね!
DIYでコストを抑えつつ、信頼される店舗に
費用は最小限、でも衛生は最大限に
古い小屋を活用することで、家賃ゼロ・工事費最小限という理想的な形で営業許可を取得できました。
しかし、何よりも大切なのは衛生面に妥協しないこと。
許可をもらうだけでなく、「お客さんに安心してもらえる環境」を整える意識が大切です。
食中毒などを起こしてしまったら、お客さんからの信頼はほぼ取り戻せないでしょう。



これくらい大丈夫だろう・・・なんて思わずに、衛生面には真剣に向き合おうね!
手作りだからこそ伝わる“ぬくもり”
キッチンは屋根や電気系、ガスの配管など専門家に依頼した部分を除いて、その他は全てをDIYで作り上げました。
お客さんが飲食する東屋も、屋根以外は全て自分たちで作りました。
木の温もりや、祖母の使っていた器具の再利用など、どこか懐かしい雰囲気が漂うこの場所は、お金では買えない空間になっています。
まとめ:工夫次第で実家でも飲食店営業は可能!
実家のキッチンで営業できなくても、アイデアと工夫で道は拓ける。
今回の小屋改装で得た最大の教訓は、「使える場所に目を向けること」でした。
田舎には、使われなくなった小屋や倉庫、納屋がたくさんあります。
それらに少し手を加えることで、立派な営業スペースになる可能性があるのです。
「設備にお金をかける前に、まず“今あるもの”を見つめる」。
それが、実家カフェ成功の第一歩だと実感しています。
地方にはたくさんの素敵な場所があります。
「田舎だから」と諦めずに、何か利用価値はないか?再利用できないか?を考えて、自分の「好き」と組み合わせたら何か新しいことができるかもしれませんよ!



地方をどんどん盛り上げていきたいと思っています。まずは自分の住む地域から少しずつ楽しみながら進めていきます
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